ラボシェアリング

ロボット事業部が直面するバイオ実験の課題。パートナー探索をどのように行ったのか?

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introduction

レーザー、ロボット、測量技術を扱うカンタム・ウシカタ株式会社。ロボット事業では人協働ロボットを始めとする各種ロボットを扱っています。そのロボット事業でバイオ実験の必要性が生じ、Co-LABO MAKER を通じて抗菌性試験を実施するパートナーを見つけることができました。どのような課題があり、どのような流れで実験を行っていったのかなど、カンタム・ウシカタ株式会社ロボティクス事業部の技術担当川本信行さんに今回の施策について振り返って貰います。聞き手は Co-LABO MAKER 代表の古谷です。

創業100年のレーザー、ロボット、計測技術を扱うカンタム・ウシカタ

古谷:まず、御社の概要と川本さんの担当内容について聞かせて頂けますか?

川本:カンタム・ウシカタ株式会社はおよそ100年前に測量機器メーカーとして創業しました。その後、現社長の父に当たる方がレーザー機器事業を手掛け、ここ10年くらいで現社長がロボティクス事業部を立ち上げています。

私はそのロボティクス事業部の技術担当です。主力で扱っているロボットは「ユニバーサルロボット」という六軸の多関節ロボットです。自動車の製造ラインでの溶接や、部品の組み立てをしているロボットを思い浮かべていただければイメージしやすいと思います。ロボットの先につける部品は色々あり、溶接ロボットにもなれば、モノを掴むハンドロボット、バキュームを使えば真空状態でモノを運ぶことなどもできます。このようなロボットの販売のみだけではなく、ロボットを使ったシステムを組むといった、保守メンテナンスも請け負っています。

カンタム・ウシカタが扱うユニバーサルロボット、6軸で自由に動く

他にも、昨今ファミリーレストランなどで見かけるようになった配膳ロボットや、物流倉庫などでロジスティクスを行うMiRロボット(AMR)も扱っています。これまで人がフォークリフトなどを使って上げ下ろししていた荷物を代わりに運ぶロボットです。

ほかにも配膳ロボットなども扱う、動きのしくみは掃除ロボ「ルンバ」と同じとか

販売に当たって”ロボットでの”エビデンス取得がハードルに

古谷:そんなロボティクス事業部でなぜ Co-LABO MAKER に依頼をするようになったのでしょうか?

川本:弊社が昨今扱うようになったロボットに、韓国のLG社製の「CLOi」シリーズ というロボットがあります。これは、紫外線を照射して無人で室内の除菌が自動でできるロボットです。医療機関や公共機関、空港など常にアルコールなどで除菌を行う必要がある箇所に適したロボットです。

今回実験を行った除菌ロボットLG製「CLOi」、横から紫外線が照射される

この除菌ロボットは、コロナ禍で注目を集めて開発されたというよりも、人手不足に悩む医療機関の除菌の効率化や、院内での二次感染を防ぐニーズに応じて開発されました。手術室や診察室自体は空いていても、その前に陽性の患者が使っており、隈なく空間を除菌しなければいけない……といったシチュエーションのときに、人が防護服を着てその場を除菌作業するのは非常にコストも手間もかかります。そのようなときに「CLOi」があれば、無人かつ短時間で除菌ができるのです。 この「CLOi」は医療機関向けのロボットですから価格は新車の外車1台分くらいと少し値は張ります。ただ、同様のロボットはもっと高く、高級スポーツカー1台程度だったりします。医療機関としても多少なりとも廉価な機器を求めていました。

しかしながら、価格がこなれていても効果がなければ意味がありません。医療機関などに向けて営業活動をする際に「除菌の仕組みは分かったが、床に存在している菌も除菌できるといったエビデンスはありますか?」と聞かれることが多くありました。メーカー側が提示しているカタログのスペックだけでは納得して導入いただけないという課題にぶつかったのです。

古谷:確かに。紫外線を用いたUV-Cの技術は50年以上前からありますから、除菌に有効ということ自体は医療関係者もよく知っていますが、その仕組みを用いたロボットがちゃんと除菌が可能かは別の話ですね。

川本:はい。弊社でもロボットを動かしてみて空間全体に「光が当たる」ことは確認できましたが、実際に「除菌できているか」は然るべき研究機関で実験をしないと分からないという結論になったのです。

そこで弊社の側でもエビデンスを作るために、大学や病院などの研究機関に依頼して除菌の実験をできないかと模索しました。ところが、大学の研究機関だとすぐにこういった単発の実験を行うことが難しく、契約締結に手間と時間もかかります。また、病院も他に対応しなければならない業務が多く、すぐに実験をできるような状況ではありませんでした。 そんな折に弊社の社長が Co-LABO MAKER を探し出し相談をしたのがきかっけです。

懸念はCo-LABO MAKERが消してくれた

古谷:実際に問い合わせをしてから、実験を行うまでどんな流れだったかをお聞かせください。

川本:2023年の年初の問い合わせに対して Co-LABO MAKER さんから「千葉にあるパートナー機関にてラボ環境での実験ができそうです」とのご回答をいただきました。3月にはパートナー機関さんも交えた3社面談を行い、5月下旬に実験を行いました。

ロボットを動かしての実験にあたり「実験室内に段差があるので限定的な動きになる可能性がある」といった懸念はありましたが、かなり融通を効かせて実験内容を構築していただきました。実験内容は黄色ブドウ球菌を塗抹した寒天培地のシャーレをいくつか部屋の中に貼り付け、さまざまなエリアが汚染されている状況を想定してロボットを動かして効果を見るものです。

ロボットを「1周させる」「2周させる」「3周させる」といった3パターンを作ったり、天井に黄色ブドウ球菌を塗抹した寒天培地を貼り付けたりと、色々工夫していただきました。実験内容を詰めるにあたっても Co-LABO MAKER さんからもパートナー機関さんとの話し合いの場を持っていただき、不安材料を解消していただいたのはありがたかったです。 ロボットを千葉の実験実施場所に運び、実験を行って頂き、1週間後に「データは後日送りますが、成功して除菌できています」とご連絡を頂いて安堵しました。最後に報告書を頂き、しっかりしたエビデンスが得られました。

古谷:Co-LABO MAKERに依頼して良かった点などがあればお伺いしたいです。

川本:私自身の専門領域はロボット技術ですから、バイオの除菌実験などは完全に門外漢です。除菌の実験などはあまり良くわかっていませんでしたが、基準なども踏まえた提案をして頂けて非常に心強かったです。

単純にUVライトをシャーレに当てるだけでなく、「室内でロボットを実際に走らせる」という要望に合わせた試験を実施できることを知ったのは有益でした。LG社にも「こんな実験をしました」というエビデンスを提示できて、喜んでもらえました。ロボットのちゃんとした使い方をエビデンスを持って提示し、ユーザーに真に役立つ製品として販売をしていきたいです。これからは「CLOi」を自信を持って販売していく、そんな下地ができたように思います。

ロボット業界で通じ合った人としかやり取りをしていないと世間は狭くなってしまいます。コミュニケーションの広がりを持つことと、悩みがあったら、まずは知見を持っている方に相談してみること、今回はそんな学びを得られました。

古谷:Co-LABO MAKERがそのお手伝いをできて良かったです。今日は貴重なお話をありがとうございました!

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