ラボシェアリング

遊休資産だったラボを月額30万円の安定収入へ。“安心できる貸し出し”を実現するマッチングとは

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introduction

研究開発のために社内にラボを設置したものの、使われずに放置され、コストだけが発生してしまっているーーそんな企業も少なくないのではないでしょうか。環境負荷の低減に向けたソリューションを提供する株式会社環境コンサルティングは、自社で使われていなかったラボをCo-LABO MAKERに登録。レンタルラボを始めたことで、本業以外で月額30万円の安定した収入を得ています。

同社の代表取締役を務める高橋秀憲さんに、ラボ活用のユースケースやメリット、運用のポイントなどについて伺いました。聞き手はCo-LABO MAKER代表の古谷です。

1年間何も使われずに放置されていたラボ。“何か”できないかと考えたのがきっかけ

古谷:はじめに、環境コンサルティングさまが手がける事業について教えてください。

高橋:環境コンサルティングは創業以来、40年以上にわたって、活性炭による排ガス処理や産廃処理により、環境負荷の低減に寄与するビジネスを展開してきました。

特に近年では地球温暖化が叫ばれ、異常気象や気候変動の対策や取り組みが喫緊の課題となっています。そうした課題に対して、弊社では2017年から独自開発の排ガス回収装置をクラウド上で管理するシステム「環境クラウド」を提供しています。安全性や経済性を考慮した環境設備を屋外に設置し、現在の状態や次回交換予定日といった必要な情報をすべてクラウド上で一元管理できるサービスとなっています。

古谷:Co-LABO MAKERを利用するきっかけや決め手は何だったのでしょうか?

高橋:2017年に作業環境測定機関に登録し、自社で分析室(ラボ)を作りました。そこで、作業環境の分析を行い、研究開発を進めていく予定だったのですが、専門知識を保有する技術者が退職してしまって。研究開発のために新規で立ち上げたラボも、全く使われずに1年間放置されたままの状態だったのです。

そんな折に古谷さんが来られて、Co-LABO MAKERのことをご説明いただいたのが最初のきっかけです。私としても、「研究開発以外でラボを有効活用できないか」とちょうど考えていたので、まさに絶妙なタイミングでしたね。

とはいえ、当時は“レンタルでラボを貸し出す”という発想はなかったので、古谷さんの提案を聞いても、「本当に成り立つのか」という素朴な疑問がありました。それでも、古谷さんはいろいろとユニークな考えをお持ちで、人柄の面でもお付き合いできればと思い、2019年にCo-LABO MAKERへ登録しました。

依頼者と提供者の認識齟齬をなくすためのプロセス設計

古谷:Co-LABO MAKERを利用する際に懸念点はありましたか?

高橋:有機合成の実験は、1つのものが100個に、あるいは100個のものが1個になるという目に見えない世界なので、何か1つ間違えれば大きな事故につながります。そういったリスクを考慮し、信頼のおける企業に貸し出したいという思いはありました。その点については、ラボを利用する方と面接して「どのような目的で使うのか」を聞いた上で貸し出しの可否を判断できるというのは、安心材料になりました

古谷:研究施設やラボを持っている提供者にとっても、「他の人へ貸し出す」というのが新しい体験である以上、「導入時における最初のハードルをできるだけ低くしたい」というのがCo-LABO MAKERの基本的な考え方になっています。

高橋:ラボを立ち上げるにあたっては、結構な費用を投資したので、Co-LABO MAKERを通してラボを有効活用いただいて収益につながるのであれば、こちらとしても嬉しいですし、初期費用0円で導入できたのは大きなポイントでしたね。

古谷:ありがとうございます。レンタルラボの運営に人件費はかからないので、研究開発のニーズを持つ依頼者とマッチングすれば、毎月数十万円単位で収益が入ってくる。これは非常に安定性のある事業だと思っています。

高橋:貸し出し先が決まるまでがスムーズだったのもよかったです。

古谷:その点もラボを活用してもらうために重要だと思っています。スムーズかつ安心して貸し出ししていただくために、次のようなステップを用意しています。

まず、研究施設やラボを借りたい依頼者からCo-LABO MAKERに問い合わせがあります。そこで、希望する実験内容などをCo-LABO MAKERが確認し、フィットしそうな案件を施設提供者にメールでご連絡します。施設提供者がその案件に興味を持った場合、次のステップとして、依頼者と提供者が直接面談を行います。その後、依頼者が実際に研究設備を見学し、気になるところがあれば提供者に質問して疑問点を解消。お互いの認識齟齬をなくしていくというプロセスになっています。

そして、お互いに合意すれば契約となりますが、例えばいきなり数百万円という単位での貸し出しになるとハードルが高いため、まずは試しに数十万円くらいの予算で半年間使ってもらうなど、段階的にステップを踏んでいくことが多いです。そのような契約の仕方であればリスクも抑えられますし、状況に合わせて柔軟に利用することができると考えています。

研究者の安全性に配慮した設備や利便性の高さが特長

古谷:現在貸し出しているラボの特長や、依頼者の方に気持ちよく使ってもらうための工夫について教えてください。

高橋:弊社が提供するラボの特徴としては、有害物質から研究者を守るドラフトチャンバー(局所排気装置)を設置していることが挙げられます。実験時に出るガスや有害物質の匂いを、活性炭を用いて脱臭する廃棄設備は依頼者からも高い評価をいただいています。

また、研究者の被曝を防ぐドラフトチャンバーを備えたラボは、山奥や大きな工場の中にあることがほとんどです。そんななか、弊社のラボは本八幡駅から徒歩3分の場所に構えており、都心からも電車を使えば30分圏内でアクセス可能なことも大きなメリットになっています。

一方、会社によって研究開発で使用する分析機器や薬品などは全く異なるため、「この設備さえあれば、どんな会社が来ても明日から実験ができる」というわけではありません。そのため、利用を検討される人には実際に設備を見てもらい、「何が使えるのか、どういう実験ならできるのか」をあらかじめ確認してもらうようにしています。

また、弊社のラボは有機合成や環境実験に最適な機器が豊富に揃い、比較的自由度の高い実験ができる場所になっています。依頼者の方にも、ラボとして対応できる範囲の実験であれば、フレキシブルに対応していくことを心がけていて、お互いやりやすい形でコミュニケーションを取るようにしています。幸いにも、ラボを借りたいという事業者の方から、「このように使っていいでしょうか」と積極的にヒアリングいただいており、特に何の煩しさも感じることなく、スムーズに貸し出しまでの対応を行うことができています。

遊休資産だったラボを有効活用することで月額30万円の収入に

古谷:2019年にCo-LABO MAKERへ登録後、初めて貸し出しが決まって依頼者の方が初めてラボに訪れたときは、どんな心境でしたか?

高橋:Co-LABO MAKERに登録してから、1〜2ヶ月ほどで化学装置を製造しているベンチャー企業にラボを利用いただくことになりました。

非常に興味のある事業者だったこともあり、ラボを使っていただくだけにとどまらず、「将来的にはタイアップして、何か一緒に仕事できないか」と思っていましたね。諸事情で実現はできなかったのですが、レンタルラボがきっかけで新たな仕事につながる可能性を十分に感じることができました。

古谷:ラボを貸し出してから4年ほど経ちましたが、レンタルラボについての率直な感想をお聞かせください。

高橋:これまでにラボの利用実績は2件あるのですが、いずれも良い事業者に恵まれて、何のトラブルもなくラボの運用ができています。いわゆる遊休資産だったラボを有効活用し、月額でおよそ30万円の収入を得られるようになったのは、金銭的な面でも非常にありがたいと思っています。期間や分野を問わずさまざまなニーズに対応できる柔軟性が非常に魅力的ですね。

ただ、研究を続けていくうちにある程度目処がついて、大きなラボに移動しなくてはならない局面が必ずやって来るのも事実です。私としては、Co-LABO MAKERを通じて得られたご縁を大切に、事業者の方と末長くお付き合いできるような人間関係が作れたらと思っています。

古谷:最後に「こういう人にぜひ借りてほしい!」という思いがあれば、ぜひメッセージをお願いします。

高橋:自分が想像していなかったところから、ラボの活用に関する要望をもらうことで、「こういう用途でもラボが必要になるのか」という新しいニーズを発見していきたいと考えています。やはり、受け入れる事業者やニーズを限定してしまうと裾野が広がらず、仕事をする上でのコラボレーションが生まれにくくなってしまいます。これからも、「何が来るのかわからない状況でも全部受け止めよう」という気持ちを常に持ち、依頼者のお役に立てるようなラボを提供できるように尽力したいと思います。

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