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新規事業を成功に導く、研究部門開発の在り方とは?

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introduction

新サービス・新製品を迅速に生み出し続ける研究開発部門とはどのような形でしょうか。「共創」の時代とも言われる昨今はより柔軟かつ迅速なPoCの動きが求められます。計測と制御のBtoB企業として知られる横河電機株式会社。そのイノベーションセンターでセンター長を勤める加藤暁之氏が「研究部門開発における組織形態やマネジメントプロセスの在り方」をイベントで話しました。また、Co-LABO MAKER代表の古谷優貴ともトークセッションで「成果を出す研究開発部門」について語り合います。本記事はイベント『新規事業を成功に導く研究開発部門の在り方とは? 〜社外ラボ拠点の活用と組織・マネジメントの紹介〜』を記事化したものです。

“計測”と“制御”の横河電機

横河電機(株)は1915年(大正15年)創業で電気計測器から始まり、戦後には分散型盛業システムやシリコンレゾナントセンサ方式による差圧圧力伝送器を発売するなど数々のイノベーションを起こしてきた企業です。

イノベーションセンター長である加藤暁之氏は社について「横河電機は“計測”と“制御”の会社。石油や化学などにおける各種プラント工場における計測や制御を行っています。ビジョンにも『自律と共生によって持続的な価値を創造し、社会課題の解決をリードしていきます。』と定めています」と話しました。また加藤氏自身についても「半導体のセンサーを約20年間に渡って開発し、昨今は新しい研究体制開発でのマネジメントを行っている」と語りました。

横河電機では2050年に向けて「Net zero emissions :気候変動への対応」「 Well being :すべての人の豊かな生活」「Circular economy :資源循環と効率化」というサスティナビリティ目標を掲げているそう。そして、主力である制御事業ではエネルギー&サスティナビリティ事業、マテリアル事業、ライフ事業の3セグメントで主に展開をしています。

「マーケティング本部内に、新規事業開発やブランディング、知財戦略、M&A等も行っている部署があり、その一角としてイノベーションセンターもあります。お客様含めた社内外と複数の組織を絡めあって共創し価値創造するために、マーケティング本部内にイノベーションセンターを置いています」と加藤氏は話しました。

未来を見据え、Combination(新結合)を意識した研究を

実際にイノベーションセンターでは「エネルギー」「ライフ」「マテリアル」という3つの活動領域を定義しています。また、サスティナビリティ目標に呼応する、6つの貢献「カーボンニュートラルの達成」「企業や社会の効率化」「ライフサイクル最適と環境保全」「安全と健康の向上」「循環資源型エコシステムの創造」「能力を発揮できる環境の実現」に着目した研究テーマ選定を行っているとか。

「常時動いている研究テーマは40ほど。研究テーマを創出するための探索活動も広く行っています。新陳代謝も大事なので研究を続けるのではなく辞める判断も随時行い活性化を促進しています。社外に研究を紹介する仕組みとして技術カタログを作り、発信もしています」と加藤氏は語りました。

そこで大事なのは「R&D」から「C&D」への転換だと加藤氏は力説します。

「C&DのCとは、New Combination(新結合)の意味。未来を見据えた研究開発が求められています。コンビネーションのために将来を担う若手たちがナラティブの手法を用いた『実現したい、望ましい未来』のシナリオを創り、実際に技術はどのように貢献出来るかを考える取り組みも行っています」と加藤氏は詳しく解説しました。

そこで具体例として挙げたのは、大塚化学と立ち上げた合弁会社のシンクレスト株式会社。中分子医薬原薬・中間体・原料をターゲットとしたフロー合成法の共同研究を行うなかで、横河電機が持つ計測・制御技術で実現可能となる生産工程管理を融合させて、被測定物に対して非破壊的高精度計測がリアルタイムで可能な最先端のインライン計測統合型連続フロー合成に成功したそう。製薬会社の基礎創薬研究からプロセス開発、商用生産まで対応して生産性の向上に貢献するものです。

Co-LABO MAKERでさらに共創が進む

もう一つ、横河電機の共創での研究開発の実績として挙げたのがCo-LABO MAKERを用いた事例です。

「グループで初となる材料事業を目指す新会社、横河バイオフロンティアを立ち上げ、バイオマス由来成分の硫酸エステル化セルロースナノファイバーの技術開発が必要になりました。しかし、自職場専用の化学実験室は建設計画中だったので、安全かつ十分な技術検証ができなかったのです。

そこで、自職場の化学実験室が立ち上げるまでの2021年2月から11月まで、有期かつリーズナブルな実験場所を都内で探したところ、Co-LABO MAKERのレンタルラボ事業にめぐり逢いました。実際にラボを借り、基礎技術開発でも製造プロセス開発を早期に着手でき、データを取得できたので展示会での顧客価値検証が進展。また、契約満了後もラボを貸していただいた研究室とも共同研究に発展するなど大きな効果を得られました」と加藤氏は力説しました。

これからの研究開発の在り方とは

セッションの後半では、Co-LABO MAKER代表の古谷と「これからの研究開発の在り方」について議論が及びました。

古谷の「組織のマインドセットをどのように変えていったのですか?」という質問に対しては加藤氏は「もともと2010年代から『組織風土変革』の取り組みがあり、ここ数年での試行錯誤の中で『変わりきれなかった部分』にも変革の波が及びつつある。若手はもはや『共創でのグローバル戦略』が当たり前になりつつある」と回答しました。

さらに古谷の「社内の連携が大事なのでは?」という問いかけに対して、加藤氏は「口が酸っぱくなるくらい社内連携が大事とは言い続けています。組織のトップ同士が繋がり、社内のパートナーに対してのパートナーサーベイを行ってますが、『繋がったら何をどうして欲しいか』は互いに吸い上げてコミュニケーションができる連携体制を創り、ブラッシュアップできるようにしています」と話しました。

さらに加藤氏は「新規事業においては実験やモノを作ったりする際の実行フェーズにおいて、いかに意思決定のスピードを上げるかが重要です。Co-LABO MAKERのようなサービスを用いてパートナー企業を見つけて実験を行い、意思決定を行えることが大事。そのために社内とも社外のパートナー企業とも対話をしていくことが必要です」と締めくくりました。

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