introduction
大学のラボ発のベンチャーは、限られた予算と人員の中で研究開発を進める必要があります。特に、実験機器のスピーディーな入手や正確な情報収集は、事業に直結する重要なポイントです。今回は、Co-LABO MAKERで冷却遠心機をご購入いただいた株式会社VitroVoの山中様に、購入に至る経緯や中古機器に対する本音、そして実際に導入して感じたことを伺いました。
コストとスピードが理想的だった「中古機器」という選択
—本日はよろしくお願いします。まずは、株式会社VitroVoの事業内容について教えてください。
弊社は大学で開発された創薬試験やコンサルティングサービスを企業向けに提供している会社です。製薬会社、食品会社、化学会社などが主なお客様になります。 動物試験を減らす流れが加速している中で、「in vivo(動物実験)で行われていた試験をin vitro(試験管内での実験)に置き換える」というコンセプトを中心に、Vitro専業として新しい試験法の開発や委託試験を行っています。特に電気生理の測定・解析技術は他社にない強みです。
—今回、中古機器の購入を検討したのはどのようなきっかけだったのでしょうか?
技術開発を進めていくうちに、定期的に実験環境を整えていく必要が出てきます。今回、ちょうど設備投資をしたいタイミングで、固定資産にならない価格帯の機器を探していました。中小企業向けの補助制度を利用したかったためです。
限られた予算との兼ね合いもありましたし、補助金もすぐには使えない状況で、「短期間でもいいからとにかく使える状態」にしたいという思いがありました。新品だと納期まで時間がかかりますが、中古なら早い。
この”価格とスピード感”が大きな決め手になりました。
—普段、中古機器の情報はどのように集めていらっしゃいますか?
中古機器サイトを定期的に見たり、出入りの業者さんに聞いたりしています。ただ、業者さんに聞いてもすぐに回答が来るわけではないので、自分で調べることが多いです。 今回は「装置名+中古」などで検索して、そこからCo-LABO MAKERさんを見つけました。
ネットで何度かCo-LABO MAKERさんの名前を見かけていて、最初は研究のコラボレーション系の会社だと思っていました。今回欲しい機器について調べていた際に、Co-LABO MAKERさんは中古機器の事業もやっていると知り、さらに納品先から比較的近場に在庫があるということで、輸送費を抑えたいこともあって依頼しました。

ベンチャーの研究開発だからこそのメリットと難しさ
—山中様は以前に大企業で研究開発をしていたご経験があるとのことですが、やはりベンチャーと大企業では機器の導入プロセスに違いがあるのでしょうか?
導入のしやすさで言うと、ベンチャーの方が柔軟に動けるかもしれないですね。
大企業だと、研究者だけでなく別部門の判断も必要で、現場のニーズが伝わりづらいことがあります。「他拠点の機器を使えば?」と言われても、そう簡単ではない。例えば遠くの拠点の分析機器を使いたいとして、研究者の移動コストだけでなく、試料を結果に影響が出ないよう適切に輸送するのもかなりの手間です。
一方ベンチャーは関係者が少ない分意思決定のプロセスもスムーズで、欲しいと思ったら比較的すぐに発注できるのがメリットです。
中古機器は特に、なぜその機器を使うのか?本当に使えるのか?など、懸念される点も多いです。稟議を通す際にもうまく説明する必要がありますし、コミュニケーションに時間がかかりすぎてしまうとどうしても研究も遅れてしまいます。その点では、特に中古機器の導入にはベンチャーのスピード感と柔軟さは大きなメリットと言えますね。
—ベンチャーの中でも、「大学発ベンチャー」だからこそ苦労する部分もあるのでしょうか。
私たちは研究者が主導して立ち上げた企業ですが、情報収集まですべて自分たちでやらなければならないことですかね。
例えば、どの経費項目に入るのか、中小企業への補助制度の種類、補助金の対象範囲など…専門人材がいないと大変です。最近はAIを活用して色々と調べやすくなりましたが、大学発ベンチャーはネットワークが偏っていて、行政がおこなっているような補助制度の情報が入りづらいという課題もあります。
大学発ベンチャーは特に、コア技術を柱に会社が立ち上がる分、個人事業主などで準備期間を経て少しずつ本格化していく普通の起業とは成り立ちが少し違うんですよね。だからこそ、少しずつでも必要な知識をその都度補いながら、会社として成長していきたいと思っています。

保管状態、メンテナンス、取扱説明書…中古機器を選ぶポイント
—中古機器の購入にあたって、注意していたポイントはありますか?
色々とありますね。今までも大学の払い下げ品や中古品を使っていたりしていたのですが、古くてメンテナンスも十分でなかったり、保管状態が気になったり…どうしても新品に比べて劣る部分はありますから。
例えば、動作保証・性能保証は注意が必要です。メーカーが対応してくれない場合もあって、壊れたら修理できない可能性もあるので。取扱説明書が付いていない機種もあって、特に古いモデルだとメーカーのサイトにも情報が残っていない。性能や仕様を確認できないのは正直困りますね。
また、保管状態もよく確認した方がいいですね。中古機器は必ずしもしっかりとした保管がされているとは限らなくて、実際に保管現場を見に行ったら砂埃を被っていた…なんてこともありました。
保管状態はもちろん性能にも影響を及ぼしますし、見た目の劣化にもつながります。中古機器と言えど100万円を超えるものもあるので、状態を確認できないと気軽には踏み出せません。中古は購入時に確認できる写真がないことも多く、汚れや日焼け、テープ跡など目立つ汚れがないかなどはできる範囲で事前に状態を確認して、購入を検討しますね。
—実際に今回Co-LABO MAKER経由で中古機器を導入されてみて、いかがですか?
事前に確認できる写真がなかったので少し不安でしたが、届いてみると目立った汚れもなく、日焼けやテープ跡もなし。
バイオ系なので装置は綺麗な方がいいし、CRO(医薬品開発業務受託機関)であることから顧客がラボ見学に来た時に、もし古めかしい機器だと印象が良くないので助かりました。
性能も十分で、問題なく使用できています。
—最後に、中古機器の購入を検討している方向けに何かアドバイスをいただけますか。
中古はコストやスピードの面ですごく魅力的な選択肢です。ですが、取扱説明書があるか、しっかりと保管・メンテナンスされているかは必ず確認した方がいいです。必要な性能をきちんと出せるかどうか、そこが分かれば中古はとても頼れる選択肢になります。
—おっしゃる通りですね。我々もみなさんに安心してご購入いただけるよう、より分かりやすい情報提供と丁寧なサポートに努めていきたいと思います。本日はありがとうございました。